ゃんと出来ていた。茶卓は一つ一つ拭き込んで、てらてらに光っていたが、客はまだ一人も見えなかった。小栓は店の隅の卓子《テーブル》に向って飯を食っていた。見ると額《ひたい》の上から大粒の汗がころげ落ち、左右の肩骨が近頃めっきり高くなって、背中にピタリとついている夾襖《あわせ》の上に、八字の皺が浮紋《うきもん》のように飛び出していた。老栓はのびていた眉宇《まゆがしら》を思わず顰《しか》めた。華大媽は竈《かまど》の下から出て来て脣を顫わせながら
「取れましたか」
ときいた。
「取れたよ」
と老栓は答えた。
二人は一緒に竈の下へ行って何か相談したが、まもなく華大媽は外へ出て一枚の蓮の葉を持ってかえり卓《テーブル》の上に置いた。老栓は提灯の中から赤い饅頭を出して蓮の葉に包んだ。
飯を済まして小栓は立上ると華大媽は慌てて声を掛け
「小栓や、お前はそこに坐《すわ》っておいで。こっちへ来ちゃいけないよ」
と吩咐《いいつ》けながら竈の火を按排した。その側《そば》で老栓は一つの青い包《つつみ》と、一つの紅白の破れ提灯を一緒にして竈の中に突込むと、赤黒い※[#「(勹/臼)+炎」、第3水準1−87−6
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