薬
魯迅
井上紅梅訳
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)亮《あか》るい
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)咳嗽|入《い》りながら
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「目+爭」、第3水準1−88−85]
−−
一
亮《あか》るい月は日の出前に落ちて、寝静まった街の上に藍甕《あいがめ》のような空が残った。
華老栓《かろうせん》はひょっくり起き上ってマッチを擦り、油じんだ燈盞《とうさん》に火を移した。青白い光は茶館の中の二間《ふたま》に満ちた。
「お父さん、これから行って下さるんだね」
と年寄った女の声がした。そのとき裏の小部屋の中で咳嗽《せき》の声がした。
「うむ」
老栓は応えて上衣《うわぎ》の釦《ぼたん》を嵌《は》めながら手を伸ばし
「お前、あれをお出しな」
華大媽《かたいま》は枕の下をさぐって一|包《つつみ》の銀貨を取出し、老栓に手渡すと、老栓はガタガタ顫《ふる》えて衣套《かくし》の中に収め、著物《
次へ
全19ページ中1ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
魯迅 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング