を伸して踏み止まろうとしたが、何にも踏みしめるものがない、慌てて臂を伸ばし、山の峰にしがみついたが、それだけではもう辷《すべ》り落ちる様子がなかった。
しかし彼女は、また、水と砂とが後の方から、自分の頭や体に押寄せてくるように感じたので、振りかえってみるとザブンと一つ、口と耳に水が灌《そそ》ぎかかって、急に頭を下げたが、地面は絶えず揺れている。幸に、その動揺も静まり、彼女は少し後に退り、体を楽に坐り直し、手で額から眼のあたりの水を拭い、様子いかんをよく見たのであった。
様子は余りハッキリしないが、到るところ滝のように水が流れている、海中のようであり、所々に尖った波が立っている。彼女はただ呆然としてなすところを知らなかった。
しかしとうとう非常に静かになって、ただ以前の山のように高い大波があり、陸地の所々に角立った巌頭《がんとう》が露出している。彼女が海上を眺むれば、ただ幾つもの山が奔り流れつつ波間に旋転している。彼女は、その山が自分の脚にあたるのをよけようとして、手を伸してそれを捉えたが、その山のひだを見ると、今まで見たことのないようなものが、たくさんついている。
彼女が手を縮
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