も忘却され、次第々々に地ならしされてゆく。わたしはこれらの事を記念するに堪えない。それよりもわたしは今だに覚えている小気味のいい話をして聞かせよう」
Nはたちまち笑顔になり、手を伸ばして自分の頭を撫でまわしながら、声高に語った。
「わたしの最も得意としたのは、最初の双十節以後のことで、その時はもうわたしが道を歩いても人から笑われることがない。
老兄、君は知っているだろうが、髪の毛はわれわれ中国人の宝であり、かつ敵である。昔から今までどれほど多くの人が、この頂きのために何の直打《ねうち》もない苦しみを受けつつあったか?
ずっと昔のわれわれの古人について見ると、髪の毛は極めて軽く見られていたらしい。刑法に拠れば人の最も大切なものは頭脳だ。それゆえに大辟《しけい》は上刑である。次に必要なものは生殖器である。それゆえに宮刑《さおきり》と幽閉《へいもん》は、これもまた人を十分威嚇するに足る罰である。※[#「髟/几」、第4水準2−93−19]《かみきり》に至っては微罪中の微罪だが、かつてどれほど多くの人が、くりくり坊主にされたため、彼の社会から彼の大事な一生を蹂躙されたかしれん。
われわれ
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