頭髪の故事
魯迅
井上紅梅訳
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)剥取暦《はぎとりごよみ》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)本田|博士《はくし》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「髟/几」、第4水準2−93−19]
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日曜日の朝、わたしは剥取暦《はぎとりごよみ》のきのうの分を一枚あけて、新しい次の一枚の表面を見た。
「あ、十月十日――きょうは双十節だったんだな。この暦には少しも書いてない」
わたしの先輩の先生Nは、折柄わたしの部屋に暇潰しに来ていたが、この話を聞くと非常に不機嫌になった。
「彼等はそれでいいんだ。彼等は覚えていないでも、君はどうしようもないじゃないか。君が覚えていてもそれがまた何になる」
このN先生というお方は本来少し変な癖があって、ふだんちょっとしたことにも腹を立て、ちっとも世間に通ぜぬ話をする。そういう時にはいつもわたしは彼一人に喋舌《しゃべ》らせて一言も合槌を打たない。彼は一人で議論を始め、一
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