、あの船で一緒に行こう、と皆立上った。わたしはようやく元気づいた。けれど外祖母は子供だけじゃ安心が出来ないと言った。母親も、「誰《た》れか一人大人を附けてやりましょう」と言ったが、大人は昼の仕事に労《つ》かれているので、夜頼むわけにはゆかない。どうしようかと考えている中《うち》に、雙喜はまた何かいい事を想いついたようで大声上げて言った。
「わたしが引受けます。船は大きいし、迅《じん》ちゃんはおとなしいし、わたしどもは泳ぎがうまいし、こんなら大丈夫です」
まったくそうだ。この十幾人の子供は実際一人だって、鴨の仲間でない者はない。その上二三人は大潮を乗切った者さえある。
外祖母も母親もようやく安心して今はもう何とも言わずにただ笑っていた。わたしどもは一斉に立上っておめき叫んで門を出た。
わたしの重苦しい心は、急に軽く晴れやかになった。身体ものびのびして大きくなったように思われた。門を出ると月下の平橋《へいきょう》には白い苫船《とまぶね》が繋《もや》っていた。みんなは船に跳び込んだ。雙喜は前の棹を引抜き、阿發《あはつ》は後ろの棹を抜いた。年弱《としよわ》の子供は皆わたしに附いて中の間に
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