村芝居
魯迅
井上紅梅訳

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)支那《しな》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)水災|義捐《ぎえん》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「龍/共」、第3水準1−94−87]
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 わたしが支那《しな》の芝居を見たのは過去二十年間にたった二度だけであった。前の十年は絶対に見なかった。また見ようという意思も機会もなかったから、その二度はどちらも後の十年のうちで、しかもとうとう何の意味をも見出さずに出て来たのだ。
 第一囘は民国《みんごく》元年、わたしが初めて北京《ペキン》へ行った時、ある友達から「ここの芝居は一番いいから、以て世相を見てはどうかナ」と言われて、「芝居見物も面白かろう、まして北京《ペキン》だもの」と大《おおい》に興じてすぐに何やら園とかいう処へ行ったら、もう世話物が始まっていて、小屋の外には太鼓の響が洩れていた。わたしどもは木戸口を入ると、赤いものだの、青いものだの、幾つも眼の前にキラめ
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