をした方面なんだ。彼等は再三再四湖北に行ってくれと乃公に頼んだが、乃公はそれでも承知しないくらいだ。誰がこんな小っぽけな県城の中で事を起そうと願う奴があるもんか……」
「えーと、こーつ」阿Qは彼の話が途切れたひまに精一杯の勇気を振起《ふりおこ》して口をひらいた。だが、どうしたわけか洋先生と、彼を喚ぶことが出来なかった。
話を聴いていた四人の者は喫驚《びっくり》して阿Qの方を見た。洋先生もようやく彼に目をとめた。
「何だ」
「わたし……」
「出て行《ゆ》け」
「わたしも……に入りたい」
「生意気いうな。ころがり出ろ」と洋先生は人泣かせ棒を振上げた。
趙白眼と閑人は口を揃えて怒鳴った。
「先生がころがり出ろと被仰《おっしゃ》るのに、てめえは肯《き》かねえのか」
阿Qは頭の上に手を翳《かざ》して、覚えず知らず門外に逃げ出した。洋先生は追い馳けても来なかった。阿Qは六十歩余りも馳け出してようやく歩みを弛《ゆる》め心の中で憂愁を感じた。洋先生が彼に革命を許さないとすると、外に仕様がない。これから決して白鉢巻、白兜の人が彼を迎えに来るという望《のぞみ》を起すことが出来ない。彼が持っていた抱負
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