へ入りかけて非常に驚いたのは、偽毛唐がちょうど広場のまん中に突立って、真黒な洋服を著て、銀メダルを附けて、手にはかつて阿Qを懲らしめたステッキを持って、一尺余りの辮子を披《ひら》いて方の上に振り下げ、まるで蓬々髪《ほうほうがみ》の劉海《りゅうはい》仙人のような恰好で立っていたのだ。向き合って立っていたのは、趙白眼の外三人の閑人で、ちょうど今恭々しくお話を伺っているところだ。
阿Qはこっそり近寄って趙白眼の後ろに立ち、心の中ではお引立に預かろうと思っているんだが、さて何と言ったらいいものか、言い出す言葉を知らなかった。
彼を偽毛唐というのはもとより好くないことだ。西洋人も穏かでない。革命党も穏かでない。洋先生《やんしいさん》といえばあるいはいいかもしれない。
洋先生は眼を白黒して、ちょうど講義の真最中であったから、阿Qに眼も呉れない。
「乃公はせっかちだから顔を見るとすぐに言った。洪《こう》君! われわれは著手《ちゃくしゅ》しよう。しかし彼は結局 No《ノー》 と言った。これは洋語だからお前達には分らない。そうでなければもっと早く成功したんだぞ。とにかく、これは彼が大事を取って仕事
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