の方罫紙《ほうまいし》?)を書いて、偽毛唐に託して城内に届けてもらい、自分を自由党に紹介してくれと頼んだ。偽毛唐が帰って来た時には、秀才は四元の銀を払って胸の上に銀のメダルを掛けた。未荘の人は皆驚嘆した。これこそ柿油党《すーゆーたん》(自由と同音、柿渋《かきしぶ》は防水のため雨傘に引く、前の黄傘格に対す)の徽章《きしょう》で翰林《かんりん》を抑えつけたんだと思っていた。趙太爺は俄《にわか》に肩身が広くなり倅が秀才に中《あた》った時にも増して目障りの者が無い。阿Qを見ても知らん顔をしている。
 阿Qは不平の真最中に時々零落を感じた。銀メダルの話を聴くと彼はすぐに零落の真因を悟った。革命党になるのには、投降すればいいと思っていたが、それが出来ない。辮子を環《わが》ねればいいと思ったがそれも駄目だ。第一、革命党に知合がなければいけないのだが、彼の知っている革命党はたった二つしか無かった。その一つは城内でバサリとやられてしまった。今はただ偽毛唐一人を知っているだけで、その毛唐の処へ、相談に行《ゆ》くより外は無かった。
 錢家の大門は開け拡げてあった。阿Qは、おっかなびっくり入って行った。彼は中
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