を閉めた。阿Qはすぐに押し返したが固く締っていた。もう一度叩いてみたが返辞もしない。
これもやっぱりその日の午前中の出来事だった。機を見るに敏なる趙秀才は革命党が城内に入ったと聞いて、すぐに辮子を頭の上に巻き込み、今までずっと仲悪《なかわる》で通したあの錢毛唐《せんけとう》の処へ御機嫌伺いに行った。これは「みなともに維《こ》れ新たなり」の時であるから、彼等は話が弾んで立ちどころに情意投合の同志となり、互に相約して革命に投じた。
彼等はいろいろ想い廻して、やっと想い出したのは靜修庵の中の「皇帝万歳万、万歳!」の一つの竜牌《りゅうはい》だ。これこそすぐにも革擲《かくてき》すべきものだと思ったから、二人は時を移さず靜修庵に行《ゆ》くと、老いたる尼が邪魔をしたので、彼等は尼を満州政府と見做し、頭の上に少からざる棍棒と鉄拳を加えた。尼は彼等が帰ったあとで気を静めてよく見ると、竜牌はすでに已《すで》に砕けて地上に横たわっているのはもっともだが、観音様の前にあった一つの宣徳炉《せんとくろ》が見当らないのが不思議だ。
阿Qはあとでこの事を聞いてすこぶる自分の朝寝坊を悔んだ。それにしても彼等が阿Q
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