ゅう》の蔓《つる》を引張るとザラザラと泥が落ちた。阿Qは顫える足を踏みしめて桑の樹に攀《よ》じ昇り、畑中《はたなか》へ飛び下りると、そこは繁りに繁っていたが、老酒《ラオチュ》も饅頭も食べられそうなものは一つもない。西の垣根の方は竹藪で、下にたくさん筍《たけのこ》が生えていたが生憎ナマで役に立たない。そのほか菜種があったが実を結び、芥子菜《からしな》は花が咲いて、青菜は伸び過ぎていた。
 阿Qは試験に落第した文童のような謂れなき屈辱を感じて、ぶらぶら園門の側《そば》まで来ると、たちまち非常な喜びとなった。これは明かに大根畑だ。彼がしゃがんで抜き取ったのは、一つごく丸いものであったが、すぐに身をかがめて帰って来た。これは確かに尼ッちょのものだ。尼ッちょなんてものは阿Qとしては若草の屑のように思っているが、世の中の事は「一歩|退《しりぞ》いて考え」なければならん。だから彼はそそくさに四つの大根を引抜いて葉をむしり捨て著物の下まえの中に蔵《しま》い込んだが、その時もう婆《ばば》の尼は見つけていた。
「おみどふ(阿弥陀仏)、お前はなんだってここへ入って来たの、大根を盗んだね……まあ呆れた。罪作り
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