まだ向うの身体《からだ》に届かぬうちに、腕を抑えられ、阿Qはよろよろと腰を浮かした。※[#「てへん+丑」、第4水準2−12−93]《ね》じつけられた辮子は墻《まがき》の方へと引張られて行って、いつもの通りそこで鉢合せが始まるのだ。
「君子は口を動かして手を動かさず」と阿Qは首を歪めながら言った。
王※[#「髟/胡」、135−3]は君子でないと見え、遠慮会釈もなく彼の頭を五つほど壁にぶっつけて力任せに突放《つっぱな》すと、阿Qはふらふらと六尺余り遠ざかった。そこで※[#「髟/胡」、135−4]《ひげ》は大《おおい》に満足して立去った。
阿Qの記憶ではおおかたこれは生れて初めての屈辱といってもいい、王※[#「髟/胡」、135−5]は顋《あご》に絡まる※[#「髟/胡」、135−5]《ひげ》の欠点で前から阿Qに侮られていたが、阿Qを侮ったことは無かった。むろん手出しなど出来るはずの者ではなかったが、ところが現在遂に手出しをしたから妙だ。まさか世間の噂のように皇帝が登用《とうよう》試験をやめて秀才も挙人《きょじん》も不用になり、それで趙家の威風が減じ、それで彼等も阿Qに対して見下すようになっ
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