ろがこの怒目《どもく》主義を採用してから、未荘のひま人はいよいよ附け上がって彼を嬲《なぶ》り物にした。ちょっと彼の顔を見ると彼等はわざとおッたまげて
「おや、明るくなって来たよ」
 阿Qはいつもの通り目を怒らして睨むと、彼等は一向平気で
「と思ったら、空気ランプがここにある」
 アハハハハハと皆は一緒になって笑った。阿Qは仕方なしに他の復讎の話をして
「てめえ達は、やっぱり相手にならねえ」
 この時こそ、彼の頭の上には一種高尚なる光栄ある禿があるのだ。ふだんの斑《まだ》ら禿とは違う。だが前にも言ったとおり阿Qは見識がある。彼はすぐに規則違犯を感づいて、もうその先きは言わない。
 閑人《ひまじん》達はまだやめないで彼をあしらっていると、遂にに打ち合いになる。阿Qは形式上負かされて黄いろい辮子《べんつ》を引張られ、壁に対して四つ五つ鉢合せを頂戴《ちょうだい》し、閑人はようやく胸をすかして勝ち慢《ほこ》って立去る。
 阿Qはしばらく佇んでいたが、心の中《うち》で思った。「[#「「」は底本では欠落]乃公はつまり子供に打たれたんだ。今の世の中は全く成っていない……」そこで彼も満足し勝ち慢《ほこ》
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