」
「ああ、後生ですから来られる早々無駄言ばかりは御免下さい」と警察探偵は笑いながら云った。
「まあ聞きたまえ、吾々《われわれ》は今グレンジル卿についてある事件を発見するところです。卿は狂人であったのです」
高い帽子をいただき鋤を担いだゴーの黒い影法師が暮れ行く空に朧げな外線を劃《かく》しながら窓硝子を過ぎて行った。師父ブラウンは熱心にそれを見送っていたがやがてフランボーに答えて云った。
「なるほど伯爵については妙な点があるに相違ないとわしは思っている。でなくば自分を生埋めにさせるわけはなくまた事実死んだとしたらあんなに慌てて葬らせようとしなくともよいはずじゃ。しかし君、狂人とはいかなる点を以て云うのじゃな」
「さあそこですが」とフランボーが云った。「[#「「」は底本では欠落]このクレーヴン君が家《うち》の中で蒐集した物件の品名目録を今読上げてもらうから聞いて下さい」
「しかし蝋燭《ろうそく》がなくてはどうもならんなア」とクレーヴンが不意に言った、「どうやら暴模様《あれもよう》になって来たようだし、これでは暗くて読めん」
「時にあなたがたの蒐集中に蝋燭らしいものがあったかな?」ブラウ
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