きれ》を手にして立っていた。倫敦《ロンドン》警視庁のクレーヴン警部だ。玄関の間《ま》は装飾の大部分が剥がれてガランとしていた。がこの家《うち》の陰険な先祖の仮髪《かつら》をかぶった蒼白いフフンというような顔が一つ二つ古色蒼然たる画布の中から見下《みおろ》していた。二人について奥の間へはいって行くと、ブラウンは二人が長い柏材《かしわざい》の卓子《テーブル》に席をしめていた事をしった。テーブルの一方の端には走書《はしりがき》のしてある紙片《かみきれ》がひろがっており、そして側にはウイスキー瓶と葉巻とが載っている。その他《た》の部屋には所々バラバラに物品が列べられてある。正体の何といって説明のつかない品ばかりである。あるものはキラキラ光る砕《こわ》れ硝子の寄集めのようである。あるものは褐色の塵芥《じんあい》の山のように見える。あるものはつまらぬ棒切れのように見えた。
「ホウまるで地質学展覧会を開業している様じゃなあ」とブラウンは腰を下《おろ》しながら、褐色の塵芥や硝子の破片の方へ頭をちょっと突出していった。
「いや地質学展覧会ではない」とフランボーが答えた。「心理学展覧会と言っていただきたい
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