に口をアングリさせたままであったが風は遠慮無くピンピンと空をつんざくように叫んだ。やがて彼は自分の手に持つ手斧を、自分のものではないようにながめてはたと落した。
「師父、師父」とフランボーが取っておきの嬰児《あかんぼ》じみたしかし重苦しげな声を叫び出した。「この際吾々はどうすればよいのでしょうか」
するとこれに応じてブラウンは小銃弾が出て行く時のシューッというような怪速度を以て、「眠る事じゃ」と叫んだ。「眠る事じゃ、わし等は路のどんづまりまで来た。眠るとはどう云う事かな。あなたは知っているかな、眠る所の凡ての人は神を信じる人であるということを、故に眠りは聖礼である。なぜならば眠りは信仰の行いであるからじゃ、吾等の糧である。でわし等は今何かしら聖礼を要する。それも自然の聖礼だが、何やら人間の上に滅多には降りて来んものがわし等の上に下《くだ》って来る。おそらくそれは人間の上に下る事の出来る最悪のものでもあろう?」するとクレーヴン探偵の唇が「一体それはどういう意味なんですか」と訊くために上下から寄り添った。
坊さんは城の方に顔を廻しながら答えた。
「わし等は真理を発見はしたのじゃ。がその
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