真理は意味を吾々に語らんのじゃ」
 こういって彼は彼としてはごく珍らしい、馬が無鉄砲に飛跳ねるような足取りをしながら、二人の前に立って山を降《くだ》った。そして城へ到着するかしないかに彼は犬のように無雑作に身体《からだ》を眠りにまかせた。

        三

 妙に勿体をつけて睡眠を讃美したのに拘らず師父ブラウンは唖者のような作男ゴーをのぞいた外《ほか》誰よりも一番早く起出《おきい》でた。そして大きなパイプを吸いながら、その黒人が菜園で無言に働いているのをジッと見守っている彼の姿が見られた。夜の明け放れる頃には夜来の嵐は篠《しの》つくような驟雨《しゅうう》を名残として鳴りをひそめ、ケロリとしたようにすがすがしい朝が一ぱいに訪れていた。作男は坊さんと何か話をしていたような素振りさえ見えたが、官私二人の探偵姿を見ると、俄にプリプリしたように鋤を畝《せ》の中に突込んだ。そして朝飯の事について何やらほざきながら、キャベツ菜の作列《さく》に添って台所の方へ姿を掻き消してしまった。
「あの男は見上げた男ですぞ」ブラウンが口をきいた。「あの男は馬鈴薯をたまげるほど掘るのでな。ただし」と彼は妙に落
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