た。
 フランボーは盲目滅法《めくらめっぽう》に掘った。が、嵐は今までの煙のように山々にまつわりついていた息苦しいような灰色雲を既に払いつくして、彼が荒木造りの棺《かん》を根こそぎ掘出して、芝生の上に引っぱり出させた頃には星影さびしい夕空をからりとのぞかせていた。クレーヴンは手斧を握りしめて前へ進みよった。薊《あざみ》の頭が彼にさわった。またもやはっとした彼は思わずたじたじとなった。がたちまち気を取直して、フランボーに負けぬ力を揮《ふる》いながら、手斧を棺《かん》へ滅多打ちに打ちこんだ。遂に蓋が飛散った。内部にあるほどのものはすべて灰色の星明りの中に異様な薄光りを放っていた。
「骨だ」とクレーヴンが云ったが、彼は次に、「人骨だ」と言い足した。何《な》にか思いがけない物を発見したように思わず大声を上げた。
「それで君、それはそっくりしているかね」とフランボーが妙に沈んだ声で訊ねた。
「さあ、そっくりしている様だが、まあ待ちなさい」探偵は棺《かん》の中に横わる黒ずんだ腐れ骸骨《がいこつ》の上に乗しかかるようにして見ながら嗄《しわが》れ声で云った。たちまちまた彼は、「これは不思議だ、骸骨に首
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