わずやりなさい」と坊さんが落着いた声で云った。「わし等はただ真理を発見しようとして試みるだけじゃ、何を恐れる事があるんじゃ」
「いやその真理の発見が実は少々、むずかしい」とフランボーが苦笑いをしながら相槌をうった。クレーヴン探偵は突然赤ん坊の歓ぶような大きな声、話声《はなしごえ》と歓声とを一しょにしたような声でこういった。
「実際何だって彼はこんな風に身体《からだ》をかくそうとしたもんだろう、何か恐ろしい事でもあるんかしら。あの男は癩病患者ででもあったのでしょうか」
「いやそれにしんにゅう[#「しんにゅう」に傍点]をかけたようなものさ」とフランボーが云った。
「へえそれにしんにゅう[#「しんにゅう」に傍点]をかけたものというと、はあて」
「なに実は私にも見当がつかないんだ」
かくてフランボーはだんまりのまま惧《おそ》る惧る何分かの間掘りつづけたが、やがて覚束なげな声でこういった。
「やれやれ死体の原形がくずれていない事を神に祈る」
「それはな、あなたこの紙面だとて同じことじゃ。この紙面を見てもわし等は気絶もせんでとにかく生延びては来たもんな」師父ブラウンが静かにまた悲しそうにこう云っ
前へ
次へ
全36ページ中20ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
チェスタートン ギルバート・キース の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング