ど疾風がどこかの人類の棲息しない目的もない遊星をめぐって咆哮でもしている様に空々たる趣きがあった。彼等は山の草深い頂上に来た。松林は頂上までは続いていないので、そこはさながら禿頭のように見えた。材木と針金とで作った粗末な外柵《そとさく》は、これが墓地の境界だと一行《いっこう》に物語る様に嵐の中にピュウピュウと鳴っていた。しかしこの時既にクレーヴン探偵は墓の一角に立ち、フランボウは鋤の尖《さき》を地中に突き立てて倚《よ》り掛っていたが二人共に、その材木や針金並びに嵐の中にフラフラと揺れて見えた。
 墓の下方には丈の高い薄気味の悪い薊《あざみ》が枯々とした銀灰色を呈しながらむらがっていた。一度ならず、二度ならず、嵐にあおられた薊の種子がブウと音を立てながらクレーヴン探偵の体を掠《かす》めて弾け飛んだが、そのたびごとに探偵は想わずそれをよける様な腰付《こしつき》になりながらピョコリと飛上っていた。
 フランボーはざわめく叢《くさむら》の上から鋤の刃をしめっぽい粘土の中へザックリと刺込んだが、思わずその手を引いて棒杭《ぼうぐい》にでもよりかかるようにその柄によりかかった。
「どんどん関《かま》
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