いのにな」
「わしは彼は半気違いになったと思いますわい」と師父ブラウンは同意した。「してわしはあんたもその冒険はやる価値があったという事を認めなさるじゃろう、なぜなら彼は逃げてしまったのじゃからな、結局」
「私は彼は非常に好運だった事は認めますな」とターラントはうなり声で言った。「してそやつは一体誰れですか?」
「あんたが言われる通り、彼は非常に幸運じゃったよ」ブラウンは答えた、「してその点に関しては少なからずな、なぜならそれは吾々が決してわからないかもしれん一事であるからな」
 彼は一瞬間恐ろしい顔をして卓子《テーブル》をにらんだ。それから言葉を続けた。「この人間は長年の間徘徊したりおどしたりしておったのじゃ、しかし彼が用心深かった一事は彼は誰れであったかを秘密にしてる事であったのじゃ。そして彼は今なおそれを保っているのですぞ。わしが考えた様に、気の毒なスメール教授が正気にかえられれば、あんたはそれについてもう聞かないじゃろうというのはかなり確かですわい」
「まあどうして、スメール教授はどうなさるのでしょうか、どうお考えになりますか?」とダイアナ夫人が訊ねた。
「彼がするであろう最初
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