において狂人の一種じゃったな」
「それは凡て大変奇妙に思われるな」ターラントがつぶやいた。「もちろん僕等は牧師はほんとに死んだかどうかを誓う事は出来んですよ。吾等は彼の死骸を見ないんですからな」
「大きに言われる通りじゃ」ブラウンが言った。
 そこには銅羅の打撃の様に急な沈黙があった。その沈黙において夫人の内に非常に正確に活動した心の奥底の当推量がほとんど叫び声を上げんばかりに彼女を動かした。
「それはたしかにあんたが見られたものじゃ」と坊さんは話し続けた。「あんたは彼の死骸を見られたはずじゃ。あんたはほんとに生きてる、彼を見なかったのじゃ。しかしあんたは彼の死骸は見られたはずじゃ。君は四本の大きな蝋燭の光りでそれをよく見たのですぞ、そしてそれは海中に自殺的に投げられていなかったじゃ。が十字軍の前に建った寺院にある教会の王子のような風に横たわっておったのじゃ」
「簡単に言いますと」ターラントが言った、「あなたはあのミイラにした死骸はほんとに殺された人の死骸であったと吾々に信ぜよと言われるのですね」
 師父ブラウンは一瞬間黙っていた。それから彼は無頓着な態度で言った。
「それについてわし
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