を聞いたように思いましたのじゃ。わしはタアラント君は見かけのようにあの人は一人ポッチだとは考えませんじゃったよ」
 タアラントが不機嫌な様子でのろのろと来た時に、その確信を得た。女の声ではあるが、高いかなりやかましい、他の声が戯談《じょうだん》まじりで話していた。
「どうして私はあの人がここに居るだろうという事を知ったか?」
 この愉快な観察が彼は話しかけられたのではないという事がスメール教授に影響した。そこで彼は幾分当惑して、まだ第三の人物が居ったという結論に達した。ダイアナ夫人が水松の木のかげからいつもの様にニコニコして出て来た時に、彼は彼女は彼女自身の生きてる影である事を注目した。レオナルド・スミスのやせたさっぱりした姿が、すぐに彼女の華美な後から現われた。
「譎漢共《ごろつきかんども》!」スメールがつぶやいた、「どうして、彼等が皆ここに居るんだろう! 海象《くらげ》のような頬鬚の生えてるあの小さな見世物師を除いて皆だ」
 彼は彼の傍に師父がおだやかに笑ってるのを聞いた。そして真にその状態は笑い事ではなくなって来た。無言劇のトリックの様に彼等の耳が転倒したりまわってるように思われ
前へ 次へ
全53ページ中21ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
チェスタートン ギルバート・キース の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング