色の着物から考えて「あの男は、わたりがらすか鳥のように見えますね」と彼等が墓地の方へ向って行った時に、スメールが言った。「悪い前兆の鳥について人々は何んと言いますかね?」
彼等はそろそろと墓地に這入った。アメリカの古物好きの眼は隈なく照っている日の光をさえぎって夜のように見える水松《いちい》の樹の大きな、そして底知れない暗い繁茂や屋根附墓地の荒れた屋根の上にためらっていた。その通路は芝生の盛りあがった中にはい上っていた。それはある塚の記念碑の像であるかもしれなかった。しかし師父ブラウンは直ちに肩の上品な猫背と重々しく上の方へつき出た短い髯に何事かをみとめた。
「や、や!」教授は叫んだ。「もしあなたがあれを人間だとおっしゃるなら、あの男はタアラントです。私がボートの上でお話した時に、私の疑問に対して案外早く回答を得られるであろうと、あなたはお考えになりませんでしたか?」
「あんたはそれに対して色々な回答を得らるるかもしれんとわしは考えましたのじゃ」と師父ブラウンは答えた。
「なぜですか、どういうわけですか?」と教授は、彼の肩越に彼を見ながら、訊ねた。
「わしはな、水松の樹のかげに人の声
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