物を持っていられますが、それは、それ自体ではつまらんものでしょうが、ある方面には非常に貴重な価格のあるものです。この品物はあなたも御承知の通り、二度あなたの手に入りましたが、二度とも私《わたくし》が奪い返しました。それは、もしあなたの手に入ってあなたのために利用せられては非常に困ると思いましたからでございます……』
『利用するって何にですか?』
『エエ、それです。伺いたいと申すのは?』
そういう彼女の力強い眼と真剣さとはかつて見た事の無いほどだった。
ルパンはついに躊躇するところなく断言した。
『私《わたくし》の目的は至極簡単です。すなわちジルベールとボーシュレーの二人を救うにあるのです』
『それは真実《ほんとう》ですか?……真実《ほんとう》ですか?……』と婦人は身を慄《ふる》わし不安の眼を輝かして叫んだ。
『私《わたくし》は知っています……私《わたくし》はあなたの何人であるかを知っています……またあなたに気付かれないで、私《わたくし》があなたの生活に立ち入ってからすでに数ヶ月になります……ですが、ある理由で私《わたくし》は今に疑問にしていることがあるのでございます……』
ルパン
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