水晶の栓
モウリス・ルブラン
新青年編輯局訳

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)暗《やみ》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)最前|艇《ふね》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#始め二重括弧、1−2−54]
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[#8字下げ][#中見出し]※[#始め二重括弧、1−2−54]一※[#終わり二重括弧、1−2−55]夜襲[#中見出し終わり]

 名にし負うアンジアン湖畔の夜半。小さい桟橋に繋いだ二隻のボートが、静かな暗《やみ》にゆらりゆらりと揺れて、夕靄の立ち籠むる湖面の彼方、家々の窓にともる赤い灯影《ほかげ》、アンジアン娯楽場《カジノ》の不夜城はキラキラと美しく水《み》の面《も》に映っている。時はちょうど九月の末、雲間を洩るる星の瞬きが二ツ三ツ。肌寒い風は水面を静に渡ってゆく。
 アルセーヌ・ルパンはとある東亭《あずまや》の中で、煙草を燻《くゆ》らしていたが、やおら身を起すと桟橋の端近く水面を覗き込むようにして、
『オイ、グロニ
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