とルパンが不足らしく呟いた。
 船は辷《すべ》る様に湖水を渡って小さな入江に横付けとなった。彼等は五六階の石段を上って上陸したが、木《こ》の間《ま》隠れになっていて、品物を運び出すには実に倔強《くっきょう》の場所であった。
『オイ別荘に人が居《お》るようじゃないか、見ろ、あれを……灯火《あかり》が点いてる』
『ありゃあ、瓦斯《がす》です……ホラネ、動かないじゃありませんか……』
 グロニャールは短艇《ボート》の傍《そば》に残って見張りの役を承わり、ルバリュは大通りに面した、新築の家の鉄門に張り込み、ルパンと二人の部下とは暗の中を匍《は》って門口まで忍んだ。ジルベールが真先に立って、手捜《てさぐ》りで玄関の鍵穴に合鍵を挿し込んで難なく扉《ドア》を開け三人が吸い込まれる様に室内へ入った。客間には瓦斯が明々《あかあか》と点《とも》っていた。
『盗み出そうって品物《しな》はどこにあるんだい?』
『野郎は馬鹿に用心深い奴で、品物は自分の室とその隣の室へ集めてあるんです』
 ルパンは窓布《カーテン》の方に進むが早いかサッとそれを開いた。途端、左の戸口から、ヌッと出た人の顔、真青《まっさお》な色を
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