して目をぱちくり、
『アッ、助けてッ! 人殺し――』
 と叫びながら室の中に逃げ込んだ。
『や、レオナールだ。書記だ!』とジルベールが叫ぶ。
『ふざけた真似をしやあがると、叩っ殺すぞ!』と、ボーシュレーが怒鳴りながら書記の後を追った。
 彼は最初に食堂に飛び込んだ。そこにはまだ皿や酒瓶が並んでいた。レオナールは室の隅に追いつめられて窓を開けて逃げようと藻掻いていた。
『コラッ、静かにしろ! 動くなッ!……アッ、畜生ッ……』
 バッタリ床上に身を俯《ふ》せる刹那、三発の銃声、薄黒い室の片隅にパッと火花が散る。間もあらばこそ、書記の身体がドッと倒れた。ルパンが早くも足を掬ったのだ。彼はいきなり相手の武器を奪うと同時にその喉を絞め上げた。
『畜生、ふざけやあがって! ……すんでの事で射《や》られる所だった……オイ、ボーシュレー、こやつをふん縛れ、愚図々々しちゃいられないぞ……ボーシュレー、灯《あかり》を持って、二階へ行こう』
 彼はジルベールの腕を掴んで引きずる様にして二階へ登った。
『馬鹿。人様の御宅《やしき》へ頂戴に推参する時はな、万事抜目なく心得てからにするのだよ。え、解ったか。ボーシ
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