オイ、大将、貴様の煙草はどこだ、マリーランドは?……アッ、あったあった』と黄色の函を取りあげて、その封緘を切った。そして人差指と親指とで物をつまみ出す様に静かに器用に徐々と函の中をかき廻してスッと抜き出した指先にキラリと光るものがあった。クラリスはアッと叫んだ。これこそ真の水晶の栓!
『これです!これです!御覧下さい、尖端に疵もなく、中央に金線の飾りがあって、ここが捩子になっていますけれども……ああもう私《わたくし》は力が抜けてしまって……』
ルパンが代って水晶の栓を開いた。と中から果して豆粒ほどの紙球が現れた。まさしく二十七名の連判状! 精巧を極めた薄葉用紙にランジュルー、デショーモン、ボラングラード、アルブュフェクス、レイバッハ、ビクトリアン・メルジイ等政界の巨頭当路の大官の名を列ね、その下に両海運河会社長の署名があって、生々しい血色の判が捺してあった。
彼はかねて用意してあったものの如くそれぞれ部下に命じて巴里《パリー》へ出発の準備をさせた。そしてルバリュを運転手に変装させて大きなトランクを持ち込み、それに魔酔せるドーブレクの身体を詰め込んで、頭には枕を当てがい、厳重に蓋をし
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