ン・ジェルマンの友人から、メルジイ夫人が毒薬を飲んだからすぐ来てくれと云って来たのであった。
一大事とばかりルパンは自動車を飛ばしてサン・ジェルマンに駈け付けた。
『死にましたか?』と火の付く様。
『いいえ、幸い分量が少かったので、大丈夫ですわ。え?、実はジャックちゃんが誘拐されたのです。自動車で泣き叫ぶのを連れ去ったらしく、クラリスさんはそれと見て狂気の様になり、『あの男だ……あの男だ……もう駄目!』と呻いて倒れたかと思うと、小さな壜を取出して一口お飲みになったのです。驚いて、夫《たく》と私《わたくし》とでとりあえず御介抱したのですが、……二週間も安静にすれば木も落ち付きましょうが……でも、お子さんが見附からないと、やはりね……』
『じゃ、子供さえ取返せばいいんですな』とルパンは遽《あわただ》しく訊ねた。『よろしいッ。私はこれから行ってジャックを取り戻して来ます。クラリスさんが目を醒したら、今夜の十二時前までには必ず子どもを連れて来るから安心なさいと仰っていただきたい。では、後をよろしく願いますよ』
と云いすてて戸外に出で、ヒラリと自動車に飛び乗ると、
『巴里《パリー》へ。ラマル
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