上、やはりドーブレクのやった様に、連判状を材料《たね》に金を強請《ゆす》ろうと計っていたのでした』
『フム、馬鹿野郎』とルパンが呟いた。『あんなコンマ以下の人間が……で、何んですか、あの寝室にやった羽目板の細工も?…………』
『ええ、皆ボーシュレーの指図でございます』と夫人は力無げに云った。
夫人の話はなかなかに尽きなかった。彼女等はボーシュレーを参謀にしてドーブレクとルパンとに対する闘争の準備として、両方に例の羽目板細工を施し、侏儒《こびと》を使って、ルパンの秘密を捜らしていたが、夫人も最後には、ボーシュレーの悪辣を嫌って愛児ジャックを使ったとのことであった。ルパンの手に入った、水晶の栓を二度奪い返したのも彼女であった。
『けれども、あなた、あの水晶の栓の中には何もございません。何一ツ入れるべき隠処《かくしどころ》もありません。紙一枚入っておりませんですからあのアンジアンの夜襲も無駄、レオナールの殺害も無益《むえき》、忰《せがれ》の捕縛も無益《むだ》、私の努力のすべても無益《むだ》になってしまいました』
『エッ、なぜ? なぜです?』
『彼品《あれ》はドーブレクがストーアブリッジのジ
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