のであるかどうかははつきり分らないけれど、とにかくもう一羽の雌鷄が、間もなく一所に遊んでゐるやうになつた。
それは全身茶褐色の雌鷄で、白い雌鷄に比してどこやら形が武骨であつた。飽く迄も白い雌鷄贔負の私には、その茶色の鷄の眼付が、何となく意地惡さうに見えてならなかつた。また實際彼女は意地惡であつた。ぱらぱらと小麥を撒いてやると、一口二口ついばむと思ふ間に、いきなり白い雌鷄をつゝいて、餌の傍に寄せつけないやうにするのであつた。氣の弱い白い雌鷄は、それに手向はうともしないで、一人で悲しさうに遠のいてゐるので、私はわざといつぱいそこらに餌を撒いてやる。すると茶色のは、自分の方を一粒殘さず拾ひ上げもしないうちに、又やつて來て白い雌鷄をつつく。それを憎らしがつて私はよく茶色の籠をかぶせてやつたものだつた。
この茶色の雌鷄は一つも卵を生まなかつた。それでゐて燒餠やきで、雄鷄が白い雌鷄を呼ぶやうなけはひがすると、つゝうつと走つて行つて、白い雌鷄をつゝいていぢめた。それにも拘らず白い方はやはり今までどほり卵を生んでゐた。そしてつゝましく群を離れて遊んでゐる事が多かつた。
『この鷄は石鷄だ。』と、ある
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