ゑとく》して、建設《けんせつ》については一部《いちぶ》一厘《いちりん》だにも學《まな》ぶことが出來《でき》なかつたのです。悶えて悶えて悶えてゐる心を、うはべの賑《にぎや》かさに紛《まぎら》はしてゐる寂《さび》しさを、人々はただ嘲笑《てうせう》の眼をもつて見ました。Kさんのその時分《じぶん》の歌《うた》に、わがはしやぎし心は晩秋《ばんしう》の蔓草《つるくさ》の如《ごと》くから/\と空鳴《からな》りするといふやうな意《こゝろ》があつたやうに覺《おぼ》えてゐます。
 多少《たせう》私達に好意《かうい》を持つてくれる人達《ひとたち》は、日《ひ》に/\氣遣《きづか》ひの眼をもつて私達に臨《のぞ》みました。それは私達の眞意《しんい》を汲《く》み取《と》り得《え》なかつたからなのでした。「君達《きみたち》の娯樂《ごらく》ともならばし給《たま》へと美《うつく》しき身《み》を魂《たましひ》を投《な》ぐ」といふあなたの歌をS誌上《しじやう》に見たその時の、なんともいふことの出來ないその心持《こゝろもち》を、私はまだまざ/\とおぼえてゐます。自ら不良少女と名乘《なの》ることによつて僅《わず》かに慰《なぐさ》
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