》もなく香《か》もなくなつていつた時には一體《いつたい》どうなるのでせう? それはたとひ、虚榮《きよえい》に誤《あやま》られたその不明《ふめい》が、その人々《ひと/″\》それ自身《じしん》の罪《つみ》であるとはいへ、所謂《いはゆる》新時代《しんじだい》の最初《さいしよ》の犧牲《ぎせい》だと思ひます。さうしてこれはただ人事《ひとごと》ではないのでした。私達《わたしたち》はよく自《みづか》ら顧《かへり》み、自らよく考へなければなりませぬ。
 私は歩きながらいろ/\なことを考へさせられました。「不良《ふりやう》少女《せうぢよ》の沒落《ぼつらく》」といふ標題《みだし》の下《もと》に、私達《わたしたち》が前後《ぜんご》しての結婚《けつこん》を×誌《し》あたりに落書《らくがき》されてから、みなもう丸《まる》三|年《ねん》を過《すご》しました。Kさんがまづ母となり、あなたも間もなく母となりました。私は私で相變《あひかは》らず貧乏世帶《びんばふじよたい》の切《き》り盛《も》りに惱《なや》まされてゐます。けれど私達は決《け》してそれを悔《く》いることはなかつたと思ひます。それはある場合《ばあひ》、ある心
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