してゐましたが、誰《たれ》もちよいと振《ふ》りかへつたまゝでそゝくさ行き過ぎるのが、「もうぢきに冬《ふゆ》が來るぞ、ぐづ/\してはゐられやしない。」とでもいつてるやうに思へて、なんとなくものわびしい氣持《きもち》がするのでした。
ふと繪葉書屋《ゑはがきや》の表《おもて》につり出した硝子張《がらすば》りの額《がく》の中に見《み》るともない眼《め》をとめると、それはみんななにがし劇場《げきぢやう》の女優《ぢよいう》の繪葉書で、どれもこれもかね/″\見馴《みな》れた素顏《すがほ》のでした。今|初《はじ》めてつく/″\とそれを見れば、長《なが》い顏、丸《まる》い顏、眼のつツたのや口《くち》の大きいのと、さまざまなうちにも、おしなべてみんなが年《とし》を取《と》りましたこと。私は暫《しばら》くたちどまつてぢいとそれらの顏々を見まもりました。なんとなくあさましいやうな、情《なさ》けないやうな氣がしみ/″\として來て、思はず知《し》らず顏がそむけられました。あゝ、さま/″\な批評《ひゝやう》に弄《もてあそ》ばれながら、繪葉書の上《うへ》に老《お》いて行く女優|達《たち》の顏!これらがやがて色《いろ
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