》れ家《が》を求めようとしました。
 その頃|雜誌《ざつし》「青鞜《せいたう》」は生《うま》れ、新《あたら》しい女といふことが大分《だいぶ》やかましくなつてまゐりました。けれど私達は初めからそれを白眼《はくがん》でみました。なぜならば、少しもそれらの運動《うんどう》や宣言《せんこく》[#ルビの「せんこく」はママ]に共鳴《きようめい》を感ずることが出來ませんでしたから。ひそかに自分達《じぶんたち》の考へはもう舊《ふる》いのだろうと肯《うなづ》きました。さうしてその舊さに滿足《まんぞく》を感じ、光榮《くわうえい》を感じました。吾々《われ/\》は覺醒《かくせい》せりと叫《さけ》ぶひまに、私達はなほ暗の中をわが生命《いのち》の渇《かわ》きのために、泉《いづみ》に近《ちか》い濕《しめ》りをさぐる愚《おろ》かさを繰《く》りかへすのでした。私達はとてもあの人達のやうな自信《じしん》と誇《ほこ》りを持つことが出來なかつた。決して現在《げんざい》の自らの心の状態を是認《ぜにん》することが出來なかつた。
 さて私の結婚|後《ご》の生活《せいくわつ》は、渦《うづ》のやうにぐる/\と私どもを弄《もてあそ》ばう
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