られる。
 一時間経ち、やがて二時間経つ。心の心まで冷め切つて行くやうな私の胸は、何者かに裏切られるやうな腹だゝしさに、だん/\意地悪く働いて行く。あゝも思ひかくも思つてみるけれど、立寄つた先や、用事の見当がつかなければつかないほど、私の心は焦慮《じ》れて来て、無暗に何かに当り散らしたくなる。
「それも面白い!」などゝ私の心は呟く。「それがあの人の示威運動だとする。あの人は泊つて来る。」
「何処へ?」と思つた時、かすかな恐れがふと影のやうに私の胸奥をかすめて消える。だけど、あの人は此頃いつだつて金らしい金は持つて居ない。すれば、必《きっ》といくら遅くても帰つて来る。帰つて来ると思へばまた、瞬間でも多少の波瀾を想像しただけに、却てそれが物足らないやうでもある。
 ふと見上げると、時計はいつか十二時近くに針をさしてゐる。私は、自分自身に対して、「ふつ!」といつたやうな気持を抱きながら、さつさと玄関の戸を閉めに出る。それから押入れから蒲団を取出す。電燈の真つ下にわざと自分のだけのべて、私は今夜どういふ態度を取り、そしてどんな言葉をもつて、あの人を迎へるだらうと、自分で自分の心を想像などしなが
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