脱殼
水野仙子
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)移つて行《ゆ》く。
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)暫くの間|雑念《ぞうねん》を
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)掻き※[#「てへん+劣」、第3水準1−84−77]る。
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)パラ/\
−−
[#ここから2字下げ]
時は移つて行《ゆ》く。今日の私はもう昨日の私ではない。脱殻《ぬけがら》をとゞめることは成長の喜びである。
その脱殻の一つを、今私はその頃の私に捧げようと思ふ。
[#ここで字下げ終わり]
いつの頃からともなしに私はさうなつて来た。どうした訳でなのかもわからない。寧《むし》ろわかることを避けて居る。面倒くさがつて居る。私はたゞ、此頃私はかうなんだと思つてみて居る。
「なんて腐つたやうな生活なんだ!」
かう言つてあの人は憤《おこ》る。すると私もさう思ふ。
「まるで腐つてるんだ。蛆《うじ》が湧くぜ今に!
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