《だ》れ切つた生活も、私が心持の取直し様一つによつて救はれもする。それだのに私は、自分で自分の心を泣かせながら、それを劬《いた》はる工夫をしないで、たゞ泣声を聞くまい/\として耳を塞いで居るに過ぎない。
「何も彼も私が悪いんだ!」
 すると、今まで押し殺し/\して居た不安が、あの人の体に就ての気遣ひが、噴き出す泉のやうに私の胸に湧き起つて来る。あの頬の窶《やつ》れも、あの顔の暗い影も、あの人の胸の異常から来るには違ひないが、それを益々色濃くして行くのは、私であるかも知れないと思ふと、恐ろしいものを抱いてるのに気がついた時のやうに、呼吸《いき》が苦しくなつて来る。やぶれかぶれな心の姿のまゝで今朝も別れたことが、無暗に不安になつて来て、かうして離れて居る時間が、一分間でも遅ければ遅いだけ、取り返しがつかずあの人の体に黒い染みが深く大きくなつて行くやうに思へる。
「今日こそほんとに温かい心をもつてあの人を迎へよう!」
 さう思ふと共に、私の体は珍しく軽くなつて、すべての考へが、如何にも妻らしい心持の上に行き渡つて行く。私は急に甲斐々々しく、家の中などの掃除を始める。夕飯にも、何か手の込んだも
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