》でもしたらいゝぢやありませんか!」
「対手《あいて》がないわ。言ひ替へればそんな興味もない訳なの。」
「ぢや、死んでおしまひなさい!」
「全くね。」
 私は面白さうな軽い調子で言つた。
「なんの興味もない………なんの刺激もない………たゞ、眠つてすべてを忘れてしまふことゝ、泣くことが一番、今の私に取つての慰めなの。私此頃、なか/\泣くことが上手になりましたよ。泣いたり、嫉妬をしたりして、自分から刺激をつくつて行くのよ。」
 Nさんは眼鏡の中から、黙つて私の顔を見て居た。

 Nさんの帰つたあと、私は潮のさすやうに寄せて来る味気なさに漬りながら、珍しく自省的な気分になつて居た。
「何も彼《か》も私がわるい!」と、最後はたゞ此一語に帰着する。たとひあの人がどうであらうと、それに応じて加減して行かねばならない立場に居るのが私なのだから。
 すべてが思ふやうにならないといつて焦慮《じ》れるのは、私が悪くなくてなんであらう。自らを医《いや》すものは自らの外にある筈がない。それを私はあの人に望んでゐる。あの人にも罪に与からせようとして居る。この上に明らかな間違つたことがあらうか? この頃の二人の倦
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