る。あの人に甘える。さうしてあの人が、私と同じ心持に引下つて来ないといつて脹《ふく》れる。泣く、笑ふ、さういふ異常な感情がたゞ私を慰める。私は自らその感情を高めて行くことに努める。
「ねえ、あなたねえ、あなたは今に必とね、第二の恋をしますよ。」と、私はふとこんなことを思ひ出して云ふ。
「どうして?」
「私とはまるで性格の違つた、私の持つてないものを持つてる、しをらしい、若い女に!」
「さうかも知れないね。」
あの人は鼻のあたりに擽《くすぐ》つたい笑ひを漂はせてる。すると、私は妙にそれが小憎らしく、また、訳のわからない嫉妬が芽ぐんで来る。
「もう、あるのかも知れないわ!」
「さうかも知れないよ。」
すると、私はぐいとあの人の口を拈《ひね》る。調戯《からか》はれるのだとは知りながら、それでも憎しみが力強く湧いて来る。
「あつたらどうするい?」
あの人は面白がつて言ひ重ねる。
「その時には私にも考へがあるわ。」
「どんな考へ?」
私はじいつと自分の心持を考へて見る。さういふ場合がほんとにあつたとしてみると、私はやつぱり腹たゝしい。うら佗びしくもある。
「いゝの。さうなつても仕方がない
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