である。二つの心の交渉はそこにと絶えてしまふ。
私はぎち/\と、唇を噛み出す。「なぜあの人はまた、私のこの心を解つてくれない? すべてがわかつて居ながら、なんでも呑み込んで居ながら、猶かうして居る、自分でも苦しいこの心を、なぜ汲み取つてくれない? あゝやつぱり駄目だ?」
「私だつて、いつまでもかうぢやないでせうよ。そのうちに自然と私の心が持ち直して来る時が来るでせう。私はそれを信じてますわ。」と、いつか私が言つたことがある。真面目に、そして、芝居気なしに、自分で自分を瞞着《ごま》かさない、しんみりとした心でさう言つた。すると、あの人は、
「そんな、来る時を待つなんていふやうな、消極的な心を持つてるから駄目なんだ。なぜ自分からその時を作つていかないんだ? すべてを肯定し、そして……」
「それが出来たら……」と、直ぐに私はその言葉も終らないうちに考へる。「出来ないといふことはないかも知れない、けれども私には出来ない。いくら内部の要求が強くても、外部の力の援けがなかつたならばそこに一つの仕事を形ち作ることは出来なくはないだらうか? その私の欲《ほっ》し求めて居る外部の力の一部分には、あの人
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