小さい時からの仲よしで、同い年のせいかよく氣があつて、大抵何事にも私に同意し、また理解してくれたあなたを信じ、百合さん、あなたゞからこそ安心してこんな取りとめもない事を書き置いて行くのですよ。私はあなたを自分の半身のやうに心得て、しかも私の短所を補ふものをあなたがふんだんに持つてるだけに、そのよりよき半身に私はあの人を托して行きたいと、勝手な事を空想したのです。
もしもこの事があなたを侮辱する事に當つたらどうぞ堪忍して頂戴。私は決してこの事をあなたに強ひるのでも、お願するのでもありません。たゞもしもどうかした運命でそんなことにもなつたらばと、私の夢をお話してゐるところなのです。どうか責任をもつてこの手紙を讀まないで下さい。そしてあなたの自由意志をもつて、あなたのこの後の幸福に就いて敏感であつて下さい。
誰でもこの世に心強く生きるためには、一つのなぐさめが必要な筈です。それは人によつてその求めるものが違ふとほりに、そのなぐさめも違ふでせうけれど、貧富を超越してお互に容し合ひ援け合ふ愛のなぐさめこそは、一番揺ぎのない力だらうと私は信じてゐます。そして夫妻の結合が、お互に最初であり最後で
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