こ》びと安心《あんしん》を新《あら》たにしようとするやうに再《ふたゝ》び手紙《てがみ》をとりあげる。
彼女《かのぢよ》の長男《ちやうなん》の勉《つとむ》は夢《ゆめ》のやうに成人《せいじん》した。小學時代《せうがくじだい》から學業《がくげふ》品行《ひんかう》共《とも》に優等《いうとう》の成績《せいせき》で、今年《ことし》中學《ちうがく》を卒《を》へると、すぐに地方《ちはう》の或《あ》る專問學校《せんもんがくかう》の入學試驗《にふがくしけん》を受《う》けるために出《で》て行《い》つたのである。今更《いまさら》に思《おも》つてみれば、勉《つとむ》はもう十九である。九つと三つの子供《こども》を遺《のこ》されてからの十|年間《ねんかん》は、今《いま》自分《じぶん》で自分《じぶん》に涙《なみだ》ぐまれるほどな苦勞《くらう》の歴史《れきし》を語《かた》つてゐる。子供達《こどもたち》の、わけても勉《つとむ》の成長《せいちやう》と進歩《しんぽ》は、彼女《かのぢよ》の生活《せいかつ》の生《い》きた日誌《につし》であつた。さうして今《いま》やその日誌《につし》は、新《あたら》しい頁《ページ》をもつて始《は
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