水野仙子

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)ある地方《ちはう》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一|日《にち》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)もとめ[#「もとめ」に傍点]

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)先《さき》へ/\と
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
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 ある地方《ちはう》の郡立病院《ぐんりつびやうゐん》に、長年《ながねん》看護婦長《かんごふちやう》をつとめて居《を》るもとめ[#「もとめ」に傍点]は、今日《けふ》一|日《にち》の時間《じかん》からはなたれると、急《きふ》に心《こゝろ》も體《からだ》も弛《たる》んでしまつたやうな氣持《きも》ちで、暮《く》れて行《ゆ》く廊下《らうか》を靜《しづ》かに歩《ある》いてゐた。
『おや、降《ふ》つてるのかしら。』
 彼女《かのぢよ》は初《はじ》めて氣《き》がついたやうに窓《まど》の外《そと》を見《み》て呟《つぶや》く。冷《ひ》え/″\として硝子《がらす》のそとに、いつからか糸《いと》のやうに細《こま》かな雨
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