い。』
彼女《かのぢよ》は若々《わか/\》しく胸《むね》をどきつかせながら、急《いそ》いで机《つくゑ》の上《うへ》の手紙《てがみ》を取《と》つて封《ふう》を切《き》つた。彼女《かのぢよ》の顏《かほ》はみる/\喜《よろこ》びに輝《かゞや》いた。曲《ゆが》みかげんに結《むす》んだ口許《くちもと》に微笑《ほゝゑみ》が泛《うか》んでゐる。
『君《きみ》ちやんや、母《かあ》さんがするからもういゝかげんにしてお置《お》き、兄《にい》さんがはいれたさうだよ、よかつたねえ。』と、あとは自分自身《じぶんじしん》にいふやうに調子《てうし》を落《おと》して、ぺたりとそのまゝ机《つくゑ》の前《まへ》に坐《すわ》つてしまつた。今《いま》の今《いま》まで張《は》りつめてゐた氣《き》が一寸《ちよつと》の間《ま》ゆるんで、彼女《かのぢよ》は一|時《じ》の安心《あんしん》のためにがつかりしてしまつたのである。何《なに》かしら胸《むね》は誇《ほこ》らしさにいつぱいで、丁度《ちやうど》人《ひと》から稱讃《しようさん》の言葉《ことば》を待《ま》ちうけてゐでもするやうにわく/\する。彼女《かのぢよ》は猶《なほ》もその喜《よろ
前へ
次へ
全19ページ中4ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
水野 仙子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング