は負惜《まけを》しみがあつた。彼女《かのぢよ》はその時《とき》自分《じぶん》の境遇《きやうぐう》をふりかへつて、再婚《さいこん》に心《こゝろ》の動《うご》くのは無理《むり》もないことだと自《みづか》ら裁《さば》いた。それを非難《ひなん》する人《ひと》があつたならば、彼女《かのぢよ》は反對《はんたい》にその人《ひと》を責《せ》めたかもしれない。それからまた彼女《かのぢよ》は、自分自身《じぶんじしん》のことよりも、子供《こども》の行末《ゆくすゑ》を計《はか》つたのだつたといふ犧牲的《ぎせいてき》な(自《みづか》ら思《おも》ふ)心《こゝろ》のために、自《みづか》ら亡夫《ばうふ》の立場《たちば》になつて自分《じぶん》の處置《しよち》を許《ゆる》した。結極《けつきよく》男《をとこ》の不徳《ふとく》な行爲《かうゐ》が責《せ》められた。さうしてたゞ欺《あざむ》かれた自分《じぶん》の不明《ふめい》に就《つ》いてばかり彼女《かのぢよ》は耻《は》ぢたのである。
しかしその後《のち》、彼女《かのぢよ》は前《まへ》にも増《ま》して一|層《そう》謹嚴《きんげん》な生活《せいくわつ》を送《おく》つた。人々《ひと
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