て、隊長がなんとかお覚悟を決めぬうちは、われわれ両人、どうにもならんこっちゃごわせんか。生死もともども、とろろもともども分けてすすろうと誓って来たんですからね。寝てばっかりいらっしゃるのは足の傷がおわるくなったんじゃごわせんか」
「どうだか知らん。ここも動かん……」
「動かんと仰有ったって、三年も五年もここに寝ていられるわけのもんじゃごわせんからね。逃げ出せるものならそのように、駄目ならまたそのように、はきはきとした覚悟を決めたいんですよ。一体どうなさるおつもりなんです」
「お生憎《あいにく》さまだが、つもりは今のところ、どんなつもりもない。おまえら、つもりたいようにつもったらよかろう」
なにもかも投げ出し切ったといったような言い方だった。――げっそりと落ち窪《くぼ》んだ目を、まじまじと見ひらいて、にこりともしないのである。
ふたりは、腐った。
苦い顔をし乍ら、目から目へなにか囁《ささや》き合っていたが、小次郎が決然として身を起すと、金丸をせき立てて言った。
「つかまったらつかまったときじゃ。探って来よう!」
「市中の容子か!」
「そうよ。こんなところにすくんでいたとて、日は照
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