流行暗殺節
佐々木味津三
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)塀《へい》ぎわに
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)富永|有隣《ゆうりん》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#ここから2字下げ]
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一
「足音が高いぞ。気付かれてはならん。早くかくれろっ」
突然、鋭い声があがったかと思うと一緒に、バラバラと黒い影が塀《へい》ぎわに平《ひら》みついた。
影は、五つだった。
吸いこまれるように、黒い板塀の中へとけこんだ黒い五つの影は、そのままじっと息をころし乍《なが》ら動かなかった。
チロ、チロと、虫の音《ね》がしみ渡った。
京の夜は、もう秋だった。
明治二年! ――長らく吹きすさんでいた血なまぐさい風は、その御一新の大号令と一緒に、東へ、東へと吹き荒れていって、久方ぶりに京にも、平和な秋がおとずれたかと思ったのに、突如としてまたなまぐさい殺気が動いて来たのである。
五人は、刺客《しかく》だった。
狙われているのは、その黒板塀の中に宿をとっている大村益次郎だった。――その昔、周
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